アブラゼミ Graptopsaltria nigrofuscata (Motschulsky, 1866) は、半翅目(カメムシ目)(Order Hemiptera)セミ科(Cicadidae Cicadidae)アブラゼミ属(Genus Graptopsaltria)に分類される世界でも珍しい翅全体が不透明のセミである。
本種は、北海道から屋久島にかけて分布している。尚、奄美群島や沖縄諸島には近縁種のリュウキュウアブラゼミ Graptopsaltria bimaculata Kato, 1925が分布し、2023年に「沖縄の昆虫たち」として映像を撮影している。本種は、これまで日本では最も身近なセミであったが、近年ではアブラゼミの数が減って、東京都心ではミンミンゼミやクマゼミが増えているように感じる。アブラゼミは高温と乾燥に弱く、東京都心のヒートアイランド現象や乾燥化が主な原因として挙げられているが、野鳥の捕食が関連するという論文もある。これはクマゼミとアブラゼミの天敵回避方法の違いによるもので、アブラゼミは近くの樹木に隠れる習性があるがクマゼミは木には隠れず遠くへ飛んで逃げるため、樹木の少ない都市部ではアブラゼミは逃避に手間取ってしまい野鳥に捕食されやすいというものである。
しかしながら、都心から離れるとクマゼミはまだ進出しておらず、自宅近辺で今年になって1回だけ鳴き声を聞いたくらいで、駅前の桜並木では、アブラゼミとミンミンゼミが大合唱している。
さて、アブラゼミは卵から孵化するまで1年を要し、孵化した幼虫は2~6年の地中生活を送って地上に出てきて羽化するのだが、毎年我が家の庭ではアブラゼミの羽化殻が見つかる。猛暑日の日は鳴く声をまったく聞かないが、最高気温が30℃を下回ると、梅やヤマボウシの木で一斉に鳴き始めてかなりうるさい。
毎年「こんなところで羽化しているのか」と羽化殻を見ては思っていたのだが、先日の夕方、コケ庭に水を撒いていると、縁側から庭に出るところの石の踏み台、沓脱石(くつぬぎいし)につかまっているアブラゼミの幼虫を見つけた。背中が割れて羽化が始まっており、その神秘的な様子を写真に撮ることができた。アブラゼミの羽化の写真撮影は、何と中学生以来48年ぶりである。
トンボの飛翔や花から花へ飛び回るチョウを撮影するのと違って、被写体が動かないというのは実に楽である。沓脱石という場所的にフレーミングが限られ、ライティングも工夫ができなかったが、久しぶりに三脚をローポジションにして、レリーズを使ってシャッターを切った。ライトはLEDライトを弱く当てて撮影。10数秒ごとに撮影してタイムラプス動画を作ろうとも思ったが、タイマーレリーズが電池切れ。手動では蚊との闘いになるので諦めた。
昆虫の羽化の様子を撮影するには、飼育個体でない限り、それを目的として生息場所に羽化の時間の前に行く必要があるが、今回は偶然とは言え、自宅の庭で観察できるのは嬉しいことである。地面から20cmほどの高さで、周囲から丸見えの場所で羽化するとは、かなり無防備であるが、羽化開始から翅が伸びきるまでおよそ50分。意外と早い。体や翅が固くなって飛べるまでは数時間かかる。時間がなく、最後まで見届けなかったが、朝にはいなくなっていたので、無事に飛び立ったのだろう。
*以下の掲載写真は、クリックしますと別窓で拡大表示されます。

アブラゼミの羽化
Canon EOS 7D / TAMRON SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/50秒 ISO-3200(撮影地:東京都内 自宅の庭 2026.7.27 18:01)

アブラゼミの羽化
Canon EOS 7D / TAMRON SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/25秒 ISO-3200(撮影地:東京都内 自宅の庭 2026.7.27 18:12)

アブラゼミの羽化
Canon EOS 7D / TAMRON SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/25秒 ISO-3200(撮影地:東京都内 自宅の庭 2026.7.27 18:23)

アブラゼミの羽化
Canon EOS 7D / TAMRON SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/15秒 ISO-3200(撮影地:東京都内 自宅の庭 2026.7.27 18:24)

アブラゼミの羽化
Canon EOS 7D / TAMRON SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/15秒 ISO-3200(撮影地:東京都内 自宅の庭 2026.7.27 18:26)

アブラゼミの羽化
Canon EOS 7D / TAMRON SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/15秒 ISO-3200(撮影地:東京都内 自宅の庭 2026.7.27 18:28)

アブラゼミの羽化
Canon EOS 7D / TAMRON SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/13秒 ISO-3200(撮影地:東京都内 自宅の庭 2026.7.27 18:38)

アブラゼミの羽化
Canon EOS 7D / TAMRON SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/6秒 ISO-3200(撮影地:東京都内 自宅の庭 2026.7.27 18:42)

アブラゼミの羽化
Canon EOS 7D / TAMRON SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/10秒 ISO-3200(撮影地:東京都内 自宅の庭 2026.7.27 18:41)

アブラゼミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/250秒 ISO-400(撮影地:東京都 2010.8.07 12:06)
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