昨今、昆虫の写真は季節外れのものばかり投稿しているが、これには理由がある。すべて過去に撮影し、ブログ「ホタルの独り言」に掲載しているが、この「ホタルの独り言 PartⅡ」には登場しない昆虫。にも拘わらず「昆虫リストと撮影機材」には、撮影した種として記載している。写真と記事を見ようと右側に表示されている「検索」で種名を入れても、名前しか載っていない「昆虫リストと撮影機材」しか出てこないのでは、申し訳ない。そこで、蔵出し写真も含めて全てRAWデータから再現像し、記載内容を追加して、記事としてまとめ直している次第である。今回は、キイトトンボと同属のベニイトトンボである。
キイトトンボ
キイトトンボ Ceriagrion melanurum Selys, 1876 は、イトトンボ科(Family Coenagrionidae)キイトトンボ属(Genus Ceriagrion)で、本州・四国・九州と、その周辺の島々に分布し、平地~山地の木立が隣接する抽水植物の豊富な池・沼・湿地・水路・水田など様々な水域に生息、水際の植物の茂みで見られる。年1~2回発生し、5月頃から9月頃まで見られる。
全長35~45mmで、オスは、和名の通り腹部を中心に鮮やかな黄色が印象的なイトトンボである。成熟すると胸部が黄緑色になり、腹部第7~10節背側には黒の斑紋がある。また腹部が他の種類よりも太いのも特徴である。メスはオスに比べるとくすんだ色合いをしていて、全体が黄緑色をしたものと腹部が黄色のものがいる。腹部に黒の斑紋はない。美しい体色の半面、気質は獰猛で、小さな昆虫や他のイトトンボを襲って食べてしまうこともある。
キイトトンボは、開発などによる湿地の消失や水質汚染、水草の衰退などによって減少しており、 環境省版レッドリストに記載はないが、都道府県版レッドリストでは、東京都と神奈川県で絶滅危惧Ⅰ類に、青森・千葉・長崎の各県で絶滅危惧Ⅱ類に、他5府県で準絶滅危惧としている。
*以下の掲載写真は、クリックしますと別窓で拡大表示されます。

キイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 800
(撮影地:東京都立川市 2011.7.24 10:53)

キイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F4.5 1/160秒 ISO 320
(撮影地:静岡県磐田市 2011.8.27 5:49)

キイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 1600
(撮影地:東京都立川市 2011.7.24 10:54)

キイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 500
(撮影地:東京都立川市 2011.7.24 10:55)

キイトトンボ(黄緑色型メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F4.5 1/125秒 ISO 500
(撮影地:静岡県磐田市 2011.8.27 5:46)

キイトトンボ(黄色型メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 1250
(撮影地:東京都立川市 2011.7.24 10:46)

キイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1O / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 1600
(撮影地:静岡県磐田市 2011.8.27 5:50)
ベニイトトンボ
ベニイトトンボ Ceriagrion nipponicum Asahina, 1967 は、イトトンボ科(Family Coenagrionidae)キイトトンボ属(Genus Ceriagrion)で、本州(宮城県・関東・東海・近畿の各府県)、四国(高知県および山口県)、九州に分布するが、産地はいずれも局地的である。全長36~43mmで、オスは全身が朱赤色、メスはくすんだ橙褐色をしており、平地や丘陵地の、樹木に囲まれた、抽水植物や浮葉植物などが繁茂した池沼に生息し、キイトトンボと混生している所もある。夏をピークに5月中旬から10月中旬まで比較的長く見ることができ、温暖な地域では年に2化しているようである。
ベニイトトンボは、環境省版レッドリストでは、以前の絶滅危惧Ⅱ類から準絶滅危惧 (NT)にワンランク下がっているが、都道府県版レッドリストでは、26の都府県で 絶滅危惧Ⅰ類やⅡ類としている。ただし、本種はこれまで、水域の汚染や植生の消失などの環境変化に弱い種と思われていたが、意外に環境適応能力があり、新産地へ分散する能力も有しているようであり、水草の移動や放逐などに伴う人為的な移動の可能性もあり、新産地の発見が相次いでいる。
昨今、本来九州南部や南西諸島に分布する近縁種の「リュウキュウベニイトトンボ」(2023年7月に沖縄本島で撮影)が関東で見つかっており、人為的な水草の流通網により定着初期の段階を経て、拡散期に入っていると言われている。ベニイトトンボと生息地が重なり、リュウキュウベニイトトンボの自然北上域では、ベニイトトンボとの競合が生じ、ベニイトトンボが絶滅する事例もある。今後さらに分布を拡大する可能性が高く、生態系への影響が懸念されている。
リュウキュウベニイトトンボのメスは、腹部第7~10節の背面が黒く、また、オスの複眼は緑色であることからベニイトトンボと区別できる。
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ベニイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.5 1/320秒 ISO 640
(撮影地:静岡県磐田市 2011.8.27 9:26)

ベニイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1O / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 1250
(撮影地:静岡県磐田市 2011.8.27 5:57)

ベニイトトンボ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/320秒 ISO 1250
(撮影地:静岡県磐田市 2011.8.27 7:02)

ベニイトトンボ(交尾態)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.5 1/320秒 ISO 250
(撮影地:静岡県磐田市 2011.10.01 13:29)

ベニイトトンボ(交尾態)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.5 1/250秒 ISO 320 +1EV
(撮影地:静岡県磐田市 2011.10.01 13:31)

ベニイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 1600
(撮影地:埼玉県さいたま市 2011.7.10 8:54)
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