ホタルの独り言 Part 2

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ヒメボタル 東京都内の生息地

 ヒメボタルは東京都内にも生息しており、秩父多摩甲斐国立公園の標高およそ700m~1,200mのブナとミズナラ、シラカンバの天然林とスギの人工林からなる山地には、局所的ではあるが、かなり広範囲に生息している。2004年から探索し観察と撮影を行っており、これまで3か所において記録をまとめてきたが、今年は知人T氏のご尽力により新たな生息地を訪れることができたので記したい。

 東京都心は、7月に入ってから連日35℃を記録していたが、訪れた7月12日は曇りで、二日前の雨が影響して都心の最高気温は26.6℃、現地は22.2℃とかなり涼しい状況であった。17時過ぎに、現地から徒歩20分の所に車を止めて、ヒメボタルの生息地には18時過ぎに到着。尾根を挟んで南西側がスギの人工林、北東側がブナとミズナラ等の天然林になっている。知人T氏の事前調査によれば、標高およそ1,070mから1,120mの約400mの区間のみで発光飛翔し、また区間の中でもある程度まとまって飛翔する部分もあるが、全体的には個体数は多くないという。今回は、当地ならではの環境が明確な場所にカメラ2台(50mmの標準レンズと広角レンズ)をセットして、ヒメボタルが発光するのを待つことにした。
 発光の開始時刻は19時20分。地面ではなく梢であった。その後、周囲でちらほら発光が見られたが、見渡せる範囲でも数頭で、しかもなかなか飛翔しない。飛翔してもスギ林のかなり高い所を短距離であった。結局、1時間の間にカメラを向けた方向で発光飛翔した個体は3頭のみ。20時半頃になると発光する個体もいなくなってしまった。それもそのはずで、撤収しようと明かりを付けたら、濃霧で何も見えない状況。気温は16℃でかなり寒い。これでは発光飛翔しないのも当然である。変温動物であるホタルは、気温は17℃を下回ると飛翔数は減る。また、濃霧ではオスが光りながら飛び回っても地面で発光するメスを見つけられず、メスも発光するオスを見つけらないことが分かっているのだろう。
  以下に、今回撮影した2枚の写真を掲載した。どちらも19時41分から19時55分の間に撮影したカットを比較明合成し、3分相当の多重とした。

ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 ISO 1600 3分相当の多重(撮影日:2025.7.12)
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 ISO 1600 焦点距離フルサイズ換算28mm 3分相当の多重(撮影日:2025.7.12)
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 以下には、2009年~2024年において東京都内のヒメボタル生息地三か所で撮影した写真をブナの天然林とスギの人工林という生息環境別に分けて掲載した。これらは、インターネット上にあふれるヒメボタルの光あふれる創作写真を目指したものではない。東京都内の中で、ヒメボタルがどのような自然環境に生息し、どのように飛翔するのかを写したものである。撮影当日の発光飛翔数が多い場合は、多重時間を多めにして現像している。
  これまで観察してきた東京のヒメボタルは、すべて薄暮型で、概ね19時半から21時の間に発光するタイプである。カメラマンや観賞者など誰一人来ない自然環境のもとで、ひっそりと暮らしている。今年訪れた生息場所も含め、今後も東京のヒメボタルを観察し、貴重な記録を写真や映像で残していきたいと思う。

ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 10分相当の多重 ISO 1600(撮影地:東京都 2021.07.10)
ヒメボタルの写真
ヒメボタルとゲンジボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 ISO 2000 3分相当の多重(撮影日:2022.7.17)
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 ISO 1600 5分相当の多重(撮影日:2022.7.17)
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 ISO 1600 焦点距離フルサイズ換算42mm 4分相当の多重(撮影地:東京都 2024.07.13)
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / バルブ撮影 F1.8 60分 FUJICOLOR NATURA 1600(撮影地:東京都 2009.07.11)
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 1600 3分相当の多重(撮影日:2019.7.13)
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 1000 3分相当の多重(撮影日:2020.7.11)
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 ISO 1600 焦点距離フルサイズ換算38mm 3分相当の多重(撮影日:2020.7.11)
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 ISO 1600 10分相当の多重(撮影地:東京都 2022.7.10 20:30) 
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 30分相当の多重 ISO 1600(撮影地:東京都 2023.07.15)
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