スプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)は、春先に花をつけ、夏まで葉をつけると、あとは地下で過ごす一連の草花の総称で、直訳すると「春の儚いもの」「春の短い命」というような意味で、「春の妖精」とも呼ばれるが、春先のみ成虫が出現するチョウもスプリング・エフェメラルと呼ばれている。トンボや甲虫類等では呼ばない。やはり「妖精」はチョウなのだろう。本記事では、以下のスプリング・エフェメラル全種から、北海道に生息する3亜種を除いた8種類を紹介したい。
スプリング・エフェメラルと呼ばれるチョウ
- ギフチョウ(Luehdorfia japonica)
- ヒメギフチョウ北海道亜種(Luehdorfia puziloi yessoensis)
- ヒメギフチョウ本州亜種(Luehdorfia puziloi inexpecta)
- ウスバアゲハ(ウスバシロチョウ)(Parnassius citrinarius)
- ヒメウスバアゲハ北海道亜種(ヒメウスバシロチョウ)(Parnassius stubbendorfii hoenei)
- ヒメウスバアゲハ利尻島亜種(ヒメウスバシロチョウ)(Parnassius stubbendorfii tateyamai)
- キイロウスバアゲハ(ウスバキチョウ)(Parnassius eversmanni daisetsuzanus)
- ツマキチョウ(Anthocharis scolymus)
- クモマツマキチョウ(Anthocharis cardamines)
- スギタニルリシジミ(Celastrina sugitanii)
- コツバメ(Callophrys ferrea ferrea)
- ミヤマセセリ(Erynnis montanus)
スプリング・エフェメラルの中でも人気があるのは、何と言ってもギフチョウではないだろうか。雪どけ直後の早春の雑木林で舞う姿は、まさに「春の妖精」である。
ギフチョウとヒメギフチョウは、たいへん近い種類で姿も形も非常に似ているが、生息地域がはっきと分かれている。これは、ギフチョウの幼虫の食草がカンアオイでヒメギフチョウの幼虫はウスバサイシンを食べることで違いが生じている。食草の分布と重なるようにギフチョウとヒメギフチョウの分布も本州中央部で東と西に分けられている。この分布境界線はギフチョウの学名を取って「リュードルフィア・ラインと呼ばれていて、ライン上にはギフチョウとヒメギフチョウの混在地域が8ヶ所ほど確認されている。
掲載した種の各々の詳しい生態については、この記事では省くが、これらスプリング・エフェメラルの特殊な生活スタイルだけは記しておきたい。ウスバアゲハは、1年のほとんどの期間を卵で過ごし、ミヤマセセリは幼虫で過ごす。同じ年1化のゼフィルス類の多くは、9ヵ月ほどが卵の期間であるし、国蝶オオムラサキは幼虫の期間が10ヵ月くらいあるので、それほど珍しいことではないが、ギフチョウ、ヒメギフチョウ、ツマキチョウ、クモマツマキチョウ、スギタニルリシジミ、コツバメは、1年のほとんどを蛹で過ごすのである。10ヵ月も蛹のままなのである。ギフチョウをはじめスプリング・エフェメラルの多くが、氷河期の頃から地球環境の変化に耐えて生き残ってきたと考えられているから、これらの生態は種の保存戦略で、それが現在に至っても変わっていないのだろう。
種類や地域にもよるが、3月下旬頃から5月上旬頃の間の僅か数週間しか舞うことのないスプリング・エフェメラル。この春、是非、実物をご堪能いただきたい。

ギフチョウ(左:相模原市/右:十日町市)

ヒメギフチョウ本州亜種(左:赤城山/右:白馬村)

ウスバアゲハ(ウスバシロチョウ)

ツマキチョウ

クモマツマキチョウ(富山県)

スギタニルリシジミ

コツバメ

ミヤマセセリ
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