ホタルは、なぜ光るのか?それは、オスとメスが、交尾のために自らの発光によってコミュニケーションを図るため。しかしながら、ホタルが目的を持って光っていることを多くの方々がご存知ない。
現在、全国各地で「ホタルまつり」や「ホタル観賞会」が行われており、多くの方々がホタルを見に訪れている。「ホタル」という昆虫ではなく、ホタルが発する光と光景を見に訪れている。ホテルの庭園や公園施設などの安全対策が取られ、安心してホタルを見ることができる所も多い。そのような場所での「ホタル観賞」は、施設内のルールに従えば気軽に楽しめるだろう。
一方、野山の川で自然発生しているホタルを観賞する場合には、絶対に行ってはならない事がある。それは、「ホタルに灯りを向けてはいけない」ということである。オスは光りながら飛び回ることで存在をアピールし、葉の上ではメスが光って応える。メスを見つけたオスは葉の上に降りて行き、光で会話をするのである。そのためには、お互いの「光」が見える暗がりがなければならない。
成虫の求愛行動は0.1ルクスの明りで阻害されることが研究で分かっている。満月の夜は発光飛翔がとても少ないのはお気づきだと思うが、満月の光は0.25ルクスもあるから、ホタルたちも求愛行動を控えてしまう。では、観賞者がホタルやホタルが飛び交う方向にライトを向けたらどうなるだろう。一般的な懐中電灯(200ルーメン)が5m先を照らすと1.27ルクス、10m先でも0.32ルクスになる。ホタルにとって影響がないわけがない。
その場のホタルの発生期間は、2週間くらいはあるだろう。ただし、メスが発生してくるのは少し後になるから、混在するのは10日ほどになる。ただし、月の光が明るい夜や、風の強い夜、気温が低くて寒い夜は、活動が鈍くなるから、交尾の機会は5日くらいかも知れない。しかも、オスとメスが出会える時間は、1日90分だけである。そのわずかなチャンスを人工的な「灯り」で邪魔をしてしまえば、交尾の機会は極端に少なくなり、将来的には発生数は少なくなるだろう。近くに民家や街灯があったり、側を車が通るところに生息している場所もあるが、ホタルは、そんな環境の中でも一番暗い場所を選んでコミュニケーションを図っているのである。
成虫を放っているだけのところは、その場で繁殖していないから「灯り」に対して気を配らなくても、毎年ホタルが見られるだろうが、本当に自然発生している生息地では、絶対に「ホタルに灯りは禁物」である。スマホはもちろん、懐中電灯を向けたり、カメラのストロボを焚くのもダメである。
これから、野山の川で自然発生しているホタルを観賞される方々は、是非ともホタルに灯りを向けないでいただきたい。生息地へは、車のヘッドライトも懐中電灯も必要のない明るい時間帯に到着し、岸辺で暗くなるのを待つようにしたい。帰るのは、ホタルが発光する時間帯が終わってからにしたい。もし、灯りを向けている方がいたら、「灯りを向けるとオスとメスが出会えなくなりますよ。」と伝えていただきたい。
ただし、人々の考え方は様々で、気を悪くしたりするかも知れない。様々なメディアで訴え、SNS等で情報を発信しても「ホタルは灯りが大嫌い」ということは、なかなか浸透しないのが現実である。以下は、あるプロの写真家の意見。(原文そのまま。一部抜粋。個人名は非公開とする)
「ストロボを使用するホタル撮影は、ホタルの繁殖行動に悪影響を及ぼしてしまいます。」 などという記述も含めて、私には極論に感じられました。
弱い懐中電灯の明かりやほんの数回のストロボの発光が、ホタルの繁殖行動に目くじらを立てるほどに悪影響を及ぼすのなら、なぜ、町の中の光がたくさん存在しホタルの活動時間帯に車が絶えず通るような場所にも、ホタルが多数生息する場所があるのでしょうか? また古河さんは、ホタルの観察に出かける際に、ヘッドライトをつけた車に乗ることはないのでしょうか?
そもそもマナーは、人それぞれが自分なりに一生懸命に考えることであり、他人に押し付ける筋合いのものではないと考えます。
ホタルを大切にしましょうという主張は、ホタルのためではなくて、突き詰めると、ホタルを好きな誰かのためなのです。 もしも人間が存在しないのなら、実はホタルはどうなってもいいのです。
ホタルに関して言うと、まずは事実が大切です。本当に懐中電灯の光や数回の発光が、目くじらをたてるほどの悪影響があるのか? ホタル愛好家が自分たちが好きなホタルの見方を、自然保護の名目で押しつけようとしていないか?せいぜい自分のホームページ内で主張すべきことだと思うのです。
このプロカメラマンは、ホタルの生態を知らない素人であるばかりでなく、自然環境に関して何も考えていないとしか言えない。きっと、こう言うにも違いない。「高山植物を撮るために自分だけほんのちょっと登山道からロープを乗り越えることが、目くじらを立てるほどに悪影響があるのか?」
次は、ある個人の方の意見。(無記名のコメントから抜粋)
「ホタルが光らなくなる=繁殖できない」と伝わると思い込んでいるのは知識がある人間のエゴ。光らなくて困るのは貴方自身に他ならない。 ホタルのためにと言いますが、それはその場のホタルを減らしたくないと言う貴方個人の利を守ろうとしているに過ぎない。
声を代弁するなどと大それたことは、どんなにその動植物のために尽力したとしても人間風情が口にすべきことでは無い。独り言で済んでいるうちは何を言っても構わないと思いますが・・・
こういった方とは議論にもない。
掲載写真は、ホタルの生息地における典型的な「光害」の一枚と、灯りが一切ない生息地での飛翔風景の3枚である。いずれも、デジタルカメラがない時代にタングステンタイプのポジフィルムで撮影したものである。
参考文献
- 宮下 衛(2009)「ゲンジボタル・ヘイケボタル幼虫に対するLED照明の影響」,土木学会論文集G Vol.65 No.1,1-7
- 宮下 衛(2011)「ゲンジボタル・ヘイケボタルの産卵に対するLED照明の影響」,土木学会論文集G(環境) 67(1), 21-29
- 遊磨 正秀(2017)「動植物に対する「光害」、特にホタル類への影響」,全国ホタル研究会誌,5
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OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / Ektachrome 320T Professional(撮影地:山梨県)
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / Ektachrome 320T Professional(撮影地:東京都)
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / Ektachrome 320T Professional(撮影地:静岡県)
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / Ektachrome 320T Professional(撮影地:東京都)
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