
これまで、フルーティストのゴールウェイ、ランパルと紹介したが、今回は80歳を迎えたオーレル・ニコレを紹介したい。
フルートを手にする人たちは、一度はこう自問してみたことがあるにちがいない。一体、フルートという楽器にどれほどのことが可能なのか?音の戯れを越えて、その背後にある人間精神の内奥に切り込むには、その音はあまりにも無力なのではないか・・・
ニコレは、フルートに無理強いして、意志的な表現や激しい感動を求めようとするのではない。フルートを出来る限り美しくやわらかに響かせて、その美観の中に感覚を越えたものを見いだしていこうとするものである。透明で暖かく、心の底にまでしみ通ってくる響きである。この道は、音楽という芸術の本道であろう。なぜなら、音楽における精神性は、音の中にしか示されず、音によってしか伝達されないものだからである。
今日、パユやバイノンなど艶やかで達者なフルートを聞かせてくれる奏者は少なくない。しかし、フルートにその先があることを教えてくれる人は、ニコレを除いて何人の奏者の名を挙げることができるだろうか。
そんなニコレの音楽芸術を味わうには、やはりバッハが一番であるが、私の一番のお気に入りは、今から42年前に録音したフランソワ・クープラン/王宮のコンセール第4番ホ短調である。