ホタルの独り言 Part 2

ホタルをはじめ、様々な昆虫の写真や自然風景の写真を掲載しています

ホタルは里山の昆虫と実感。


 友人と二人で南房総まで出かけてきた。今日の目的は、陸生ホタルの観察と写真撮影、そして新たなゲンジボタル生息地の調査である。

 千葉県は、東京では見ることの出来なくなった田園風景がまだまだ沢山広がっている。それが当たり前のように県道の両側に続いている。

 最初に、親戚の持つ山荘でオバボタルとムネクリイロボタルを撮影した後、県道からそれて脇道を進んだ。ホタルが生息していそうな谷津ばかりである。民家が点在する田んぼの真ん中を走る道。ふと右側を見ると水田の中心にこんもりとした森がある。鎮守の森である。車を降りて歩いていくと、森の向こうにも水田が広がっており、どうやら川も流れている様子。美味しい空気を吸い込みながら茂みを抜けると、護岸工事されていない幅2m程の河川と水田が広がっていた。茂みは河川に沿うように続いており、水田の向こうには低い山並み。街灯も一切ない。水田にはタニシとモノアラガイ、そして川底を覗けばカワニナが数え切れないほどへばりついていた。これならいる!

 近くの水田で草刈りをしていた農家の方に「ホタルはいますか?」と友人が訪ねれば「そこらへんにたんさんいるよ。」
”ホタルなんて珍しくもなく、普通にいる虫”というような口振りが印象的であった。
「やっぱり、いるのか!」
1時間半ほど夕食を食べながら待機。そして19時15分。1匹が茂みの奥で光り出した。
「やっぱり、いたな!でもどれほどいるのかは・・・」
19時40分。あちらこちらの茂みから無数のゲンジボタルが光りながら飛び出し、気が付けば、あぜ道や水田上には、ヘイケボタルが弱々しく飛んでいるではないか。時間が経つにつれホタルの数は増し、まさしく源平合戦となった。われわれ以外には誰一人として訪れることもない。

 すばらしい光景と環境である。しかし、これはここでの普通の風景であり出来事なのである。何の変哲もない田園風景。人々の暮らしもある。ホタルは里山に生きる普通の昆虫なのだと改めて実感した。東京都内にも、まだホタルが自然発生する所がある。いつまでもホタルが舞い続けるよう、その環境を守らなければならない。

写真(ホタルの写真より)は、自宅で羽化したホタルを自宅のセットで撮影。生息地でのストロボ撮影は禁物です。

東京ゲンジボタル研究所/古河義仁    ホームページ/「東京にそだつホタル