凍てつく早春の朝。
大地の冷えを抱えたまま、梅林は静かに朝霧をまとっている。
白く煙るその向こう、無数の蕾がひらききった花の群れが
まるで時間を忘れたように、ひそやかに広がっている。
やがて、東の空から橙の光が差し込む。
やわらかな朝陽が霧を透かし
紅と白の花びら一枚一枚に触れるたび
その景色はゆっくりと目覚めていく。
光にほどかれた花々は、凛とした冷気の中で静かに輝き
その一瞬だけ、冬と春の境目が消える。
音のない世界に、ただ色だけが満ちていく。
裏高尾、木下沢の朝は語らない。
ただ、遅れてきた春が、確かにここにあることを
静かに、確かに、告げている。
裏高尾の春は、まだ息をひそめるように遅れてやってくる。街が桜の気配に浮き立つころ、この山あいではようやく梅が満ちる。
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