ホタルの独り言 Part 2

ホタルをはじめ、様々な昆虫の写真や自然風景の写真を掲載しています

ミヤマシロチョウ

 ミヤマシロチョウ Aporia hippia japonica Matsumura は、シロチョウ科(FamilyPieridae)ミヤマシロチョウ属(Genus Aporia)のチョウで、ブログ「ホタルの独り言(Part Ⅰ)」には5枚の写真を掲載しているが内容が乏しく、本ブログでは単独の掲載をしていなかったので未掲載の蔵出し写真を含めて、改めて再現像してまとめた。

 ミヤマシロチョウは、開張およそ60mm。翅の表は一様に白色で裏は翅脈に沿って黒色で後翅の基部は黄色。幼虫の食樹はヒロハヘビノボラズやメギで幼虫で越冬。年に1回、7月中旬から発生し、8月上旬頃まで見られる。成虫は緩やかに飛翔し、クガイソウ、ミヤマイボタ、ヒヨドリバナの花に吸蜜に訪れる。また、オスは湿った場所や渓流のほとり等に集まり、集団で吸水を行うこともある。
 ミヤマシロチョウは他のチョウと比較して、特異な生態が見られる。その一つが幼虫の集団行動である。幼虫期に集団行動で生活するチョウはほとんど見られない。メスは、食樹であるメギの木の葉裏に80~150個ほどの卵をまとめて産みつける。卵は、20日間ほどで孵化し、幼虫は、口から糸を吐いて葉で巣を作り、集団でメギの葉を食べて成長する。3齢になった幼虫は9月下旬から10月頃になるとメギの葉を食べることを止め、共同の巣の中で冬を越す。翌春、5月になるとメギの葉が茂り始め、幼虫は再び食べ始める。共同で生活している巣は、大きくなり、葉を食べていないときにはその巣の中で過ごす。そして終齢の5齢になると、食樹や付近の植物に移動して蛹になり、20日間ほどで羽化して成虫になるのである。

 ミヤマシロチョウは、国外では朝鮮半島、中国南部、ロシア南東部に分布し、国内では本州中部山岳地域の標高およそ1,000~2,000mの飛騨山脈(北アルプス)・浅間山系・八ヶ岳及び赤石山脈(南アルプス)に分布する高山蝶である。生息地の開発による消失や植生遷移による食樹の減少から近年は絶滅の危険が増大しており、環境省レッドリストで絶滅危惧IB類 (EN) に選定されているほか、各県のレッドリストにおいても絶滅危惧種に指定している。昭和50年には長野県の天然記念物の指定を受け、特別指定希少野生動植物の指定を受けており、群馬県と山梨県でも天然記念物に指定しているが、飛騨山脈(北アルプス)では既に絶滅しており、八ヶ岳でも平成28年以降観察事例がないという。もともと限られた生息地域しかないこと、そして新たな生息適地の生成が行われなことから、メタ個体群の崩壊が起こり絶滅したと考えられる。
 また、浅間山系の主産地である小烏帽子岳と湯ノ丸山でも、温暖化とここ数年の猛暑の影響が追い打ちをかけ、2025年現在非常に少ない状況であるという。このままでは絶滅するのは確実であり、国内での生息地は赤石山脈(南アルプス)だけになるとも言われている。
 ミヤマシロチョウを撮影したのは、湯の丸高原つつじ平(標高約1,800m)で、今から12年も前の2013年7月である。当時は、探さなくてもすぐに目の目を優雅に舞う姿に出会えたが、絶滅に向かっていることは何ともやりきれない気持ちである。翌年の2014年に撮影したミヤマモンキチョウも減っていると聞いた。

参考文献:中濱直之 他.ゲノム縮約解析とミトコンドリアDNA解析に基づく、絶滅集団への再導入源の探索。日本の高山草原性絶滅危惧種ミヤマシロチョウにおける事例.
Journal of Insect Conservation 2022.(26) P.121–130

*以下の掲載写真は、クリックしますと別窓で拡大表示されます。

ミヤマシロチョウの写真
ミヤマシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 320 +0.7EV
(撮影地:長野県東御市/湯の丸高原つつじ平 2013.07.13 13:45)

ミヤマシロチョウの写真
ミヤマシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400 +0.7EV
(撮影地:長野県東御市/湯の丸高原つつじ平 2013.07.13 13:41)

ミヤマシロチョウの写真
ミヤマシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400 +0.7EV
(撮影地:長野県東御市/湯の丸高原つつじ平 2013.07.13 13:51)

ミヤマシロチョウの写真
ミヤマシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.0 1/1000秒 ISO 200
(撮影地:長野県東御市/湯の丸高原つつじ平 2013.07.13 13:33)

ミヤマシロチョウの写真
ミヤマシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.0 1/640秒 ISO 200
(撮影地:長野県東御市/湯の丸高原つつじ平 2013.07.13 13:24)

ミヤマシロチョウの写真
ミヤマシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 320 +0.7EV
(撮影地:長野県東御市/湯の丸高原つつじ平 2013.07.13 13:52)

ミヤマシロチョウの写真
ミヤマシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 200 +0.7EV
(撮影地:長野県東御市/湯の丸高原つつじ平 2013.07.13 13:43)

ミヤマシロチョウの写真
ミヤマシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 250 +0.7EV
(撮影地:長野県東御市/湯の丸高原つつじ平 2013.07.13 13:43)

ミヤマシロチョウ生息地の写真
ミヤマシロチョウの生息地
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200 +0.7EV
(撮影地:長野県東御市/湯の丸高原つつじ平 2013.07.13 13:46)

--------------------------------------------------------------------------------------------------

ホタルの独り言 Part 2 古河義仁/Copyright (C) 2025 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.