コバネアオイトトンボ Lestes japonicus Selys, 1883 は、アオイトトンボ科(Family Lestidae)アオイトトンボ属(Genus Lestes)で、ブログ「ホタルの独り言(Part Ⅰ)」には掲載しているが、本ブログでは単独の掲載ではなく、分類をまとめた記事「アオイトトンボ属」の中で写真を数点紹介しているだけであった。そこで今回、コバネアオイトトンボとして記事をまとめた。
分布と形態
コバネアオイトトンボは、本州・四国・九州に広く分布するが、生息地は局所的である。主に平地や低山地のクログワイやヒメホタルイ、ヒメガマ等比較的柔らかい組織を持つ抽水植物が繁茂し、周囲に明るい草むらが隣接している池沼や湿地が生息環境である。
成虫は腹長26~33mm、後翅長18~22mmでアオイトトンボ属4種中、最も小さい。和名に「コバネ」とあるが、形状から短く見えるだけで翅の長さはアオイトトンボとさほど変わらない。同属他種に似るが、胸側部の金緑色部と淡色部の境界線の形状で区別できる。本種は、胸部の金属光沢部の先端が、下段のライン(第二側縫線)に接しないのが大きな特徴である。また、同属他種は羽化後すぐに金属光沢色が発現するが、本種は、羽化しばらくは全身がオレンジ色を呈しており、成熟が進むと複眼の青みが増し、体色が赤銅色に変化するが、胸部や腹にまったく粉をふかないことも特徴である。
生活史
コバネアオイトトンボは一年一化で、6月頃に羽化し、未熟な個体は同属のアオイトトンボ等のように羽化場所から離れた林縁等へはあまり移動せず、羽化した付近の抽水植物内や草むらで生活するようである。秋になると繁殖活動を行い10月頃に産卵する。産卵は午後から夕方にかけて、連結した状態で水辺の挺水植物行われる。メス単独での産卵もしばしば見られる。
減少の原因
コバネアオイトトンボは、もともと生息地が局所的な上、昨今では全国的に激減しており消滅した産地も多い。環境省版レッドリスト2020で絶滅危惧ⅠB類 (EN)としており、都道府県版レッドリストにおいても40のの都府県で絶滅や絶滅危惧Ⅰ類としている。
本種のメスは、同属4種の中で、最も産卵管を動かす筋肉の発達が悪く、柔らかい組織を持つカンガレイとかクログワイなどにしか産卵できないという狭選択性が減少の理由とする見方もあるが、比較的組織の堅いヨシやガマへの産卵も見られることから、必ずしもそれだけが理由ではないという意見もある。近年の開発による生息環境の消失、植生遷移による抽水植物の繁茂する良好な環境の減少が、原因の1つであることには間違いない。
以下に写真を掲載したが、残念ながら交尾態や産卵の写真は未撮影である。近県に確実な生息場所がないために頻繁な訪問ができないのが理由であるが、ゆくゆくは、撮影して記録として残したいと思う。尚、写真は、クリックすると別窓で拡大表示される。
参考文献:川合禎次・谷田一三 2018. 『日本産水生昆虫 第二版: 科・属・種への検索』東海大学出版部.

コバネアオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F3.5 1/200秒 ISO 400
(撮影地:静岡県 2011.10.01 7:57)

コバネアオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F4.0 1/250秒 ISO 250
(撮影地:静岡県 2011.10.01 8:00)

コバネアオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.0 1/200秒 ISO 400
(撮影地:静岡県 2011.10.01 7:33)

コバネアオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.5 1/250秒 ISO 320
(撮影地:静岡県 2011.10.01 13:44)

コバネアオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/200秒 ISO 400
(撮影地:静岡県 2011.10.01 13:50)

コバネアオイトトンボ(成熟個体)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 100
(撮影地:新潟県 2024.10.12 9:40)

コバネアオイトトンボ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 640
(撮影地:新潟県 2024.10.12 9:24)

コバネアオイトトンボ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.5 1/400秒 ISO 200
(撮影地:静岡県 2011.10.01 13:42)

コバネアオイトトンボ(未成熟個体)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 1/500秒 ISO 200
(撮影地:静岡県 2011.8.27 6:14)

コバネアオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.0 1/200秒 ISO 250
(撮影地:静岡県 2011.10.01 13:56)

アオイトトンボ(胸部の金属光沢部と第二側縫線)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/320秒 ISO 200 +0.3EV
(撮影地:長野県 2015.8.01 12:56)
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