~分類まとめ⑯~
このブログでは、個別に記事掲載している種を分類上同じグループでまとめた記事を時々掲載してきた。(カテゴリー:昆虫分類まとめ)今回は、ミスジチョウ属と題してリュウキュウミスジを除く撮影済みの5種をまとめた。
ミスジチョウ属は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)イチモンジチョウ亜科(Subfamily Limenitinae)ミスジチョウ族(Tribe Neptini)に属するグループで、日本国内には、以下の6種類が生息している。
- ミスジチョウ Neptis philyra Ménétriès, 1858
- オオミスジ Neptis alwina kaempferi (d'Orza, 1867)
- コミスジ Neptis sappho intermedia Pryer, 1877
- ホシミスジ Neptis pryeri Butler, 1871
- フタスジチョウ Neptis rivularis insularum Fruhstorfer, 1907
- リュウキュウミスジ Neptis hylas luculenta Fruhstorfer, 1907
ミスジチョウ属は、数回羽ばたいては水平に翅を広げてすべるような飛び方をするチョウで、英語ではセイラーまたはグライダーと呼ばれている。イチモンジチョウは、黒地に名前の由来となった一文字の白紋が並んでいるのが大きな特徴だが、ミスジチョウ属は、1種を除いて白帯が前翅に1本、後翅に2本斜めに走っており、翅を開くとこれらの帯模様が「三」字に見えることが和名の由来になっている。
ミスジチョウ
ミスジチョウは、北海道・本州・四国・九州に分布する。幼虫の食樹はカエデ科のイロハカエデ、ヤマモミジなどで、日本産のミスジチョウ属のうち最も森林性が強く、渓谷沿いの落葉広葉樹林でよく見られる。
環境省版レッドリストに記載はないが、福岡県RDBでは絶滅危惧Ⅰ類、千葉県RDBでは絶滅危惧Ⅱ類、その他10の府県のRDBで絶滅危惧Ⅰ類や絶滅危惧Ⅱ類、準絶滅危惧種に記載されている。
オオミスジ
オオミスジは、北海道南部から南限は天竜川、西限は琵琶湖近辺に分布。幼虫の食樹となるウメ、スモモ、アンズなどバラ科の植物の古木のある山村とその周辺に生息している。
環境省版レッドリストに記載はないが、神奈川県のRDBで絶滅危惧Ⅰ類、東京都及び石川県のRDBで絶滅危惧Ⅱ類、他4つの県で準絶滅危惧種としている。
コミスジ
コミスジは、日本各地に広く分布しており、山地、平地ともに日当たりの良い林縁、林間に見られる普通種である。幼虫はクズ、ハギ、フジ、ニセアカシアなどのマメ科植物を食草としている。
ホシミスジ
ホシミスジは、本州・四国・九州に分布。主に丘陵地や山地に生息し、林縁や灌木を交えた草原などの日当たりの良い場所で多く見られる。幼虫の食樹は、コデマリ・ユキヤナギ・カエデなどの低木で、特にシモツケは重要な食草植物である。
本種は、生態や斑紋の違い等から東北・中部地方亜種(Neptis pryeri iwasei)、北上高地亜種(Neptis pryeri kitakamiensis)、関西以西亜種(Neptis pryeri setoensis)、紀伊山地亜種(Neptis pryeri kiiensis)、九州亜種(Neptis pryeri shirozutakashii)、隠岐諸島亜種(Neptis pryeri yodoei)などに分けられており、今後の研究によっては、DNAによる解析も進められており更に亜種が増える可能性がある。
環境省版レッドリストに記載はないが、各亜種の生息地域の県RDBで絶滅危惧Ⅰ類等としている。
フタスジチョウ
フタスジチョウは、北海道では平地に、本州では標高1,000m以上の高原や山地の林、草地などに生息し、食草はバラ科のユキヤナギ、シモツケ、イワシモツケ、ホザキシモツケなどである。ミスジチョウ属では、本種が唯一、白帯が前翅に一条・後翅に一条の2本であり和名の由来となっている。
生息地が分断されているため帯の幅や形の地理的変異が著しく、北海道亜種、東北北部亜種、奥只見亜種、中部山岳亜種(研究者によって異なる)に区分され、環境省版レッドリストに記載はないものの、多くが県RDBで絶滅危惧Ⅰ類等としている。
以下に、比較のために翅表の写真、サムネイルでは他のカットも含めて掲載したが、ミスジチョウ属は、翅を広げて止まることが多く、翅裏の写真が撮影できていない種もある。 チョウの図鑑的写真とは、翅の表と裏、オスとメス、種によっては季節型や亜種、それぞれの特徴が分かる写真を撮ってこそのものだが、その意味では、ミスジチョウ属は撮り甲斐のあるチョウである。
ミスジチョウ
オオミスジ
コミスジ
ホシミスジ
フタスジチョウ
*以下のサムネイル写真は、クリックしますとオリジナルサイズで拡大表示されます。
ミスジチョウ
オオミスジ
コミスジ
ホシミスジ
フタスジチョウ
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