ホタルの独り言 Part 2

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印旛沼の朝焼け

~蔵出し写真④~

 印旛沼は、ブログに「印旛沼の夜明け」として4枚の写真を掲載しているが、以下の3枚はその時に掲載しなかった蔵出し写真である。「夜明け」の記事では、数十枚と撮影したカットの中でも、穏やかな印旛沼の水面に映る空の雲の色彩を意識して撮影したものを掲載したため、その他はお蔵入りとしていた。今回は、赤く色づいた水面と印旛沼の漁業で用いられている「張網」の光景を写したものを改めて現像して掲載した。
 朝焼けに染まる水面が、ゆるやかに風を受けて揺れる。鳥たちの羽音が遠くで響き、沼に並ぶ張網の影が、夜と朝の境に溶けていく。しかし、その光景の裏には、もうひとつの現実がある。

 印旛沼で何十年も網を投げ続けてきた漁師たちは、かつてのような漁の喜びを感じることが難しくなっている。
 かつては鮭、ギバチ、タナゴなど、在来種や利根川から遡上してきた種など多種多様な魚類が生息していたが、開発によって激減したという。独立行政法人 水資源機構によれば、平成26年の調査では、フナ、コイ、モツゴ等の主要な在来種25種、国内移入種、及びブルーギルやチャネルキャットフィッシュ(アメリカナマズ)などの特定外来種15種が確認されているという。外来種ぼ増加によって在来種が減少しているという。
 また、以前は25種類にも及ぶ漁法や漁具があり、対象とする魚種によってそれが適宜使い分けられていたそうだが、漁師の数や漁獲量の減少等もあって、現在では張網、刺網、柴漬漁、船曳網、せん・竹筒等限られた漁法・漁具になってきているという。漁師の数も高齢化や後継者不足等により減少傾向であり、漁獲量も20年余りで対比8%まで減少するなど想像以上に厳しい状況になっている。

 早朝の出漁も報われない日々が続く。「昔は、この時間が一番楽しみだったんだよ。」そう語る漁師の目にも、朝焼けは今も変わらず美しい。しかし、その美しさを支える自然と人との関係は、確実に揺らいでいる。
 それでも、漁師たちは今日も船を出す。朝の光の中にあるのは、希望という名のかすかな光だ。印旛沼の朝焼けは、ただの風景ではない。そこには、自然とともに生きようとする人々の祈りが宿っている。

*以下の掲載写真は、クリックしますと別窓で拡大表示されます。

印旛沼の夜明け前の写真
印旛沼の夜明け前
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 30秒 ISO 1000(撮影地:千葉県佐倉市 2021.12.12 5:26)
印旛沼の朝焼けの写真
印旛沼の朝焼け
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 3.2秒 ISO 100 +1.3EV(撮影地:千葉県佐倉市 2021.12.12 6:15)
印旛沼の朝焼けの写真
印旛沼の朝焼け
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1.3秒 ISO 100 +1EV(撮影地:千葉県佐倉市 2021.12.12 6:28)
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