~蔵出し写真②~
滝の拝(たきのはい)は、和歌山県古座川町を流れる古座川の支流である小川(こがわ)にある、滝と多数の甌穴群からなる渓谷である。2021年10月末にサツマシジミの撮影で和歌山を訪れた時、道の駅・瀧之拝太郎で車中泊をしたのだが、そこは和歌山県指定(2010年3月)の天然記念物「滝の拝」に隣接する道の駅であり、写真は、翌朝に散策をした際に撮ったスナップ3枚である。
滝の拝付近の川床は、約200メートルにわたり第三紀中期中新世の下里累層の砂岩質互層からなる河床が、河水及び砂礫によって円形ないし舟底型、溝型、壺型に侵食されながら無数の甌穴が現れることを繰り返して、形成されという。この景観は、江戸時代に紀伊藩によって編纂されたローカルな地誌「続風土記」にも記載されているそうである。渓谷の中央部には滝が後退して形成された水路状の瀞(どろ)があり、その奥には落差約8メートルの滝が存在する。「紀伊続風土記」では「波伊(はい)の滝」といわれ、その奇勝を神として崇拝した自然信仰「タキオガミ」が名前の由来といわれている。999個の穴を掘った滝ノ拝太郎の伝説も伝えられている。
滝の拝がある南紀熊野地域は、日本ジオパーク委員会から認定されたジオパークとなっており、滝の拝はジオパークを特色づけるジオサイトであり、私たちが生きている「地球」の46 億年にわたる物語の一部が記録された地質遺産である。
滝の拝の景観は、同じジオパークである伊豆半島の柱状節理がつくるもの(「城ヶ崎海岸」として掲載)とは違い、その奇妙さ不思議さに圧倒される。まさに「地球の造形美」であろう。自然が何万年、何十万年という時間をかけて水と石だけで刻みこんだ景観には、人の手では決して作れない秩序と偶然の調和が感じられ、“時間そのものが凝縮された風景”のような深い魅力がある。
静寂の谷に、水の声が響く
岩は語らず、ただ永遠の時を刻む
無数の丸い窪みは
流れと石が織りなす、時の文様
それは、地球がゆっくりと呼吸してきた証
光が差しこむたびに
水面は揺れ、影は舞い
生命の鼓動が静かに蘇る
滝は落ち、再び流れ
岩は削られ、形を変えながらも
変わらぬ存在として、ここにある
人はその前に立ち尽くす
言葉を失い
ただ、この不思議な景観に身を委ねる
― 水と岩が創り出した、悠久の祈り
滝の拝
それは、地球が描いた、ひとつの物語
参考資料:和歌山県教育庁生涯学習局文化遺産課ホームページ
*以下の掲載写真は、クリックしますと別窓で拡大表示されます。
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 800 +0.7EV(撮影地:和歌山県古座川町 2021.10.29 7:58)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/200秒 ISO 800(撮影地:和歌山県古座川町 2021.10.29 8:31)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/100秒 ISO 500 +0.7EV(撮影地:和歌山県古座川町 2021.10.29 8:32)
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